晝は夢 夜ぞうつつ

本と、夜の考えごと

孤独と雑踏の合間

渋谷の雑踏に居ると
何百もの生命体とすれ違うのに

彼らを誰も知らない自分に
より一層孤独が増してくる



もう一生見ないかもしれない
あなたの顔を見てるかもしれないのに

わたしは俯くしかないの?



通り過ぎる
知らない人間って

全てが
「モブ」でしかない

そんな事実が
悲しくてつらい



誰もが他人にとっては
得体の知れない生命体なのに

誰もが
人生の主人公だということを
少しでもあなたの価値を
感じ取りたいと思って

想いを馳せれば馳せるほど

発信した電波は
渋谷の空で
行き場をなくしている



あなたも
何かを考えながら
どこかの目的に向かって歩いているのに

一度も交差しない人生



毎日同じ金属の中に
閉じ込められているのに

頭の中にも
LINEの中にも
わたしもあなたも

存在しないのは
何故なんだろう



どうでもいい「モブ」への想いを
見なかったことには
できない気がしてしまった

世界から自分を
排斥しているような気がしてしまうから



他人の存在を
慈しめばいいのか

他人の存在を
自分の世界から
掃き出した方がいいのか



そんな風に

「モブ」について
考えていると

同じ空間に居ることが
居た堪れなくなってくる



もしかしたら
さっきのスーツの人は
泣きたいほどつらいかもしれない


声をかける隙間さえあれば
何か変わるかもしれない

なんて

どうでもいい想像をして



ヒーローになれもしないのに

「モブ」に想いを馳せるのは

なんていうきもち?



もし何かの歯車が違って

全ての人が
わたしにとって
「大切な人」

だったらどうなるんだろう



そういうことを
考えていると

どうしようもなくなってくる



こんなに一生懸命なのに

結局誰のことも知らないわたしがいて

自分という枠からし
あなたを観ることができない

自分がもどかしい



あなたにとっては
あなたしか「主人公」はいなくて

わたしにとっては
わたししか「主人公」になれなくて



わたしにとってあなたが

「モブ」だったとしても
「大切な人」だったとしても


そこに
何の意味なんて
ないのかもしれないね



自分しか主人公になれない

そんな世界がつらくて

ずっと
あなたのヒーローになりたかったけど

わたしが一番ヒーローを探していた



本当は
渋谷にもニューヨークにも
ヒーローは居ないし

あなたのヒーローにもなれない



そういうことに
気づいた時に初めて


わたしの中に
あなたが存在していた



わたしの外には
「モブ」しかいないけど

わたしの中には
「モブ」なんてどこにもいないんだ



孤独と雑踏の合間に

意味を見出そうとしないでおこうと思った